この記事で学べること
インプラントという治療法はだいぶ世の中に普及してきたかと思われます。おそらくこの文章を読んで頂いている皆様も、身近な方でインプラント治療を受けた方がいらっしゃるのではないでしょうか。そのおかげで患者様のインプラントに対する理解というか基礎知識も、最近はだいぶ正確なものになってきたと感じます。
日本で一般的にインプラントと言うと、歯医者でおこなうインプラントを想像する方も多いかもしれません。これらは正確に呼ぶ場合は歯科用インプラント(Dental implant)と定義されております。わざわざ歯科用と注意書きがあるくらいですから、もしかして医科用のインプラントもあるのかな?と思われた方、正解です。インプラントとは、体内に埋め込まれる装置、機器の総称でして、医科用途では人工股関節やペースメーカー、心臓の人工弁などもインプラントと呼ばれています。
さらには美容のためのインプラントもあることをご存じでしょうか?例えば鼻を高くしたりするために体内に入れるシリコーンも、立派なインプラントの一種です。さらには入れ墨(タトゥー)も体内に色素を埋め込むという点から、広い意味でのインプラントに含まれることもあります。このように、インプラントというものは様々な分野にまたがって利用され、皆様の役に立っております。歯科用インプラントがペースメーカーや人工弁など、患者様の生命を左右する装置と同じ分野として扱ってもらえており、しかもその中で最も知名度が高いということは、歯科医師としては誇らしくもあり、同時に責任の重さを感じます。
歯科用インプラントは歯を抜いた後の治療法のうちの一つ
歯科用インプラントは置換医療に分類され、失われた歯を人工物で“置き換える”(missing teeth replacement)治療です。
3つのパーツから主に成り立っていて、骨の中に埋め込まれ歯の根っこの役割をする部分が①フィクスチャー(インプラント体)、そして歯の形をした部分が②上部構造、この二つをつなぐ役割の③アバットメントです。
ブリッジ 〜インプラント以前の治療法〜
歯科用インプラントは、従来はブリッジ(橋義歯、fixed partial denture)と呼ばれていた治療の代わりの選択肢となっております。ブリッジは歯が抜けた部分の両隣の歯を削って、3本連続一体の歯を装着する方法です。
それ以外の治療の選択肢としては、入れ歯(取り外し可能な部分義歯、removal partial denture)がありますが、装着感の良さ、見た目の問題、ちゃんと噛めるなどの機能性の面からも、歯を抜いた後の治療としてはブリッジや、歯科用インプラントが選択されることが多いです。
では、歯科用インプラントとブリッジ、どちらが良いのでしょうか?
次回の記事ではこの両者の利点、欠点を、科学的根拠のある研究を引用しながら比較してみたいと思います。