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冷たいものや甘いもので歯がしみる知覚過敏、原因と治療法「塗り薬、歯磨き粉編」

Experience Based

  • 執筆者: 李光純
  • 2021/03/26
  • 記事区分:非会員/無料

記事の長さ:3203文字

アイスを食べたとき、冷たいものを飲んだとき、歯ブラシで歯をこすったとき、一瞬歯が凍みて『ウッ』となることはありませんか?虫歯かな?と心配されて歯科医院を受診される方も少なくないと思います。

歯に明らかな虫歯がない場合は『知覚過敏』の可能性が高いです。この記事では知覚過敏で行われる治療の選択肢のうち、もっとも歯に刺激を与えない方法、塗り薬の治療、または知覚過敏用の歯磨き粉について解説していきます。効果がない場合はどうするか?についても解説しています。

*歯に虫歯がなくても、歯がしみる原因は、知覚過敏以外にもいくつかあります。

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歯の痛みの原因は?虫歯だけじゃないんです

 

治療の名前
知覚過敏の治療(塗り薬)、知覚過敏用の歯磨き粉を使用する
この治療のメリット
歯を削ったりしないため、低侵襲(歯に優しい)治療、費用が安価
この治療のデメリット
効果が薄れてくることがある、または完全に治らないない場合もある、薬が届かない場所の近く過敏には効きにくい
その他の治療の選択肢
詰め物を貼り付ける方法、クラウン治療、神経を取る治療
著者だったらどれを選ぶか
まずは歯を削ったりしない低侵襲の治療法、塗り薬や歯磨き粉を試してみます。効果がなければもう一段階突っ込んだ治療を選択します。

知覚過敏とは?その原因

『知覚過敏』は露出した歯の象牙質から冷たい刺激や、甘い刺激、こすった時の刺激が歯の内部の神経に伝わることによって起こる一過性の鋭い痛みを感じる現象です。歯の外側はエナメル質という硬い層に覆われていて、象牙質はその内部にあります。

歯の構造について、より詳しくは関連記事『歯の構造と虫歯、痛みのしくみ』へ

 

何らかの原因でエナメル質の覆いがなくり、象牙質が露出すると、知覚過敏の症状が起こることがあります。象牙質には目には見えないくらいの細い管があり、そこを通して神経に刺激が伝わります。

知覚過敏の原因
歯の構造:白い部分がエナメル質、肌色の部分が象牙質、そしてその内部に歯の神経があります。通常、象牙質はエナメル質に覆われているので、刺激が神経に伝わることはありませんが、何らかの原因で象牙質が露出すると、知覚過敏の症状が起こることがあります。

 

一般的には歯肉が退縮(下がる)ことで、歯の付け根が露出する、というパターンが多いようです。

知覚過敏の原因、歯肉退縮
歯茎が下がると、歯茎に覆われていた象牙質が露出します。大部分の知覚過敏の原因です。

知覚過敏の治療法、塗り薬、市販の歯磨き粉の効能

露出した象牙質を塞ぐことが治療のキーポイントです。そうすると刺激が神経に伝わらなくなります。

知覚過敏の歯磨き粉や、歯科医院で行われる塗り薬の治療には、象牙質の管(象牙細管)を塞ぐ効果のる成分が含まれています。歯を削ることなく、成分を染み込ませたり、薄い膜で覆ってしまうような効果で症状を改善するのが目的です。

 

知覚過敏の歯磨き粉はどれくらい効果があるの?

症状の軽い知覚過敏、薬が塗りやすい位置に起きている知覚過敏に適しています。

歯の全周のうち、唇側、舌側の部分に知覚過敏がある場合は薬を届かせやすいですが、歯と歯の間の付け根に知覚過敏がある場合は薬が塗りにくく、効かせることが難しい場合もあります。

まずは市販の知覚過敏用の歯磨き粉を試しに使ってみてください。改善する方も多いです。

症状が改善されれば、それ以上の治療は必要ありません。

 

歯科医院での塗り薬の治療の効果は?

歯科医院での塗り薬の治療は、複数のメーカーからコーティンング剤が販売されており、塗る表面を清潔にし、乾燥させた状態でマニュアル通りに塗布していきます。効果がある場合は治療直後から凍み無くなるでしょう。

凍みる症状が改善しない場合は、次の段階の治療を試すことになります。

 

知覚過敏の歯磨き粉や、塗り薬の治療のメリット

露出した象牙質の表面に薬を塗るだけなので、歯を削ったり等の治療が必要ありません。歯を傷つけないで済むため歯に優しい(低侵襲)の治療といえます。それ以外の治療法より治療回数、時間や手間もかからないため、費用も安価です。

 

知覚過敏の歯磨き粉や、塗り薬の治療のデメリット

重度になってくると、効果がない場合もあります。

前より染みないけど、完全に治らない場合も多く、また効果があってもすぐに薄れてしまい、頻繁に塗り薬を塗ってもらう必要がある、ということもあります。

 

知覚過敏の症状が歯磨き粉や塗り薬で治らない時のその他の治療の選択肢3つ

以下に3つの治療法を簡潔に説明します。

①コンポジットレジン修復:知覚過敏の部分を歯科の材料(コンポジットレジンまたはセメント)で覆い、物理的に刺激を遮断します。歯の状態によっては、歯を削らずに行う場合、または削る必要がある場合もあります。

 

②クラウン治療:歯と歯の間の部分はレジン充填が難しいため、その部分に知覚過敏がある場合はクラウン治療が適応となる場合もあります。

 

③神経を取る治療(根管治療):知覚過敏が重度の場合、象牙質を覆っても歯が凍みて症状が改善しない場合は、神経自体に炎症が起こっていることが考えられます。

知覚過敏自体は、温度や機械的刺激が神経に伝わることで一過性に生じるものですが、象牙細管は刺激だけでなくお口の中の細菌の刺激も伝わります。明らかな虫歯がなくても、 目に見えないほどの細菌が象牙細管を介して神経に炎症を起こす場合もあります。また、歯の表面の細かい亀裂が象牙質に達している場合、過去の虫歯治療で行なった詰め物の隙間からも神経に炎症を起こす場合があります(歯髄炎が起きている)。この場合は染みる症状は、知覚過敏によるものだけでなく、神経の炎症が原因かもしれません。こういったことが同時に起こっている場合は象牙質を物理的にシールドしても、神経自体に炎症があるために症状が改善しません。

ですので、こういったケースでは神経を取る治療や部分的に神経を切断する方法が適応となる場合もあります。

著者が選ぶ治療とその理由

私でしたらまずは最も歯を傷つけない(低侵襲)塗り薬や歯磨き粉を試してみます。それで改善しなかったら次の段階の治療(レジンでおおう)を試します。それでもダメな場合は、クラウンにしたり、神経を取る等、より侵襲度の高い治療に段階的に移行していきます。削る、神経を取る、という選択肢を最初から試すことはしないでしょう。ただし、1ヶ月後から海外に行く、そしてそこでは高水準の医療が受けられない、そして日本には長いこと帰国できないかもしれない、というような状態だと話は別です。現地で神経を取る治療を受けるリスクを回避するためにアグレッシブな治療に踏み切るかもしれません。

参考文献

1) Pashley, D.H. and Tay, F.R.(2012).  Pulpodentin complex. In Seltzer and Bender’s Dental Pulp: 2nd Ed. Quintessence Publishing Co, Inc.

2)Brännström, M. and Astrom. A. (1972) The hydrodynamics of dentine: its possible relation to dentinal pain. Int Dent J. 22, 219-227.

3) Tjäderhane, L. and Paju, S. (2019) Dentin‐Pulp and Periodontal Anatomy and Physiology. In Essential Endodontology : Prevention and Treatment of Apical Periodontitis:3rd Ed. Wiley-Blackwell.

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