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舌痛症〜口の中がヒリヒリ、ピリピリ痛い病気〜

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  • 執筆者: 吉川達也
  • 2020/10/08
  • 記事区分:非会員/無料

記事の長さ:1811文字

この記事で学べること

舌痛症という病気は聞いたことがありますか?

舌や口の中がヒリヒリ、ピリピリする不快症状で内科や歯科にかかっても改善しない、またはメンタルの病気と言われ、余計に悩んでしまう。どうすれば良いのか?

痛みの専門家が、ある患者さんのご相談を元に詳しく解説します。

1、ある患者さん(60代女性)のご相談

数年前から、舌のピリピリ、ヒリヒリした痛みがとれず困っています。地元の歯科や内科にいったのですが舌には異常ないと言われ、歯科で痛み止めやうがい薬、内科でビタミン剤や軟膏が出されたのですが一向に良くなりません。食事は普通に食べられて、午前中は良い日もありますが、午後から夜にかけてどんどん悪くなります。何か治す方法はないでしょうか?

 

2、舌痛症とは?

ご相談の症状から舌痛症という病気の可能性が考えられます。舌にやけどをしたか、歯がこすれているようなヒリヒリ、ピリピリした痛みが一か月以上続きます。舌だけでなく、口唇や上あごなど、お口の中全体に出る方もいます。半数以上の方が痛みだけでなくお口の乾き、ザラザラ感や味覚の障害を伴います。ところが、食事には支障がないことが多く、ガムやあめを口にすると症状が和らぐこともしばしばです。ただし、熱いものや刺激物に敏感になる方もいます。症状に波があることが多く、日によって痛みの場所が移動したり、午前中より午後から夜にかけて悪化したりします。痛みの程度は、日常生活に影響のない程度の方から、痛みのために寝込んでしまう方まで様々です。ご本人も表現に困る痛みで、通常の検査でも異常が見つからないため、「気のせいではないか」、「メンタルの病気ではないか」などと診断され、不快な症状を抱えたまま我慢している患者さんも少なくありません。

舌痛症について
口の中や舌がピリピリする病気、舌痛症と治療法について

 

3、どんな人に多いの?原因は?

発症頻度は一般人口の2%前後で、ほとんどが40代以降、70~80%が女性です。歯の治療の後で発症する方もいますが、その治療自体は原因ではなく、あくまで「きっかけ」の一つにすぎません。さまざまな要因が関係するといわれ、現在のところ単一の原因は特定できていませんが、お口の特殊な神経痛のようなものと考えられています。若いころに頭痛があった方や、光や音への過敏があった方が半数くらいおられ、体質的に脳が痛みに敏感な方も多いようです。また、真面目で几帳面、頑張り屋という人にも多く見られます。

 

4、治療法は?

 ご相談の患者さんのように一般的には、消炎鎮痛薬、ステロイド軟膏、うがい薬、ビタミン剤などが試され、あるいは歯の研磨まで受けられる方もいますが、効果ははっきりしません。40代以降の女性に多いことから更年期障害の治療を受けられる方もいますが、ホルモン補充療法で必ずしも改善するとは限らず、関連はよくわかっていません。

しかし、幸い約50年前から少量の抗うつ薬や抗てんかん薬の有効性が知られています。これらはうつなどメンタルへの効果ではなく、慢性疼痛への効果をねらったものです。実際、「片頭痛」の予防にも使われるお薬ですので、脳の過敏さを和らげてくれる効果もあるのではないかと考えられています。患者さんのうち約70%の方は数か月かけて徐々に改善していきます。ただし薬の効き方や副作用の出方には個人差が大きく、画一的な効き方はしません。患者さん一人一人に合わせた処方の工夫が求められ、相応の経験が必要とされます。症状が軽くなっても、その後も継続して4~6か月程度は服薬を続けたほうが痛みのぶり返しを防げます。また、眠気や肝機能障害、唾液分泌量低下などの副作用には注意が必要です。

どうしても薬が合わない方や心理的な要因が強い患者さんでは、薬だけではなかなか効果が得られないこともあります。薬以外の治療法としては、認知行動療法も有効とされており、単独もしくは薬物療法と併用されます。加えて、普段の生活リズムを整えることも回復の助けになります。十分な睡眠や心身の疲れをためないように心掛け、遠慮なく家族の助けも借りるようにしましょう。適度な運動やバランスの良い栄養摂取も大切です。

基本的には治る可能性の高い病気ですので、専門医に一度ご相談されることをお勧めします。

 

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