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歯の構造と虫歯のしくみ

Learning Materials

  • 執筆者: 李光純
  • 2020/04/03
  • 記事区分:非会員/無料
  • 虫歯
  • 虫歯予防

記事の長さ:2573文字

この記事で学べること

歯がどういう構造で成り立っているか、それぞれの構造の役割としくみを学ぶ事で、虫歯の成り立ちを理解しやすくなり、歯が痛くなる原因も理解しやすくなります。その知識を大切な歯の虫歯予防に役立てましょう!!

 

『歯』といって思い浮かべるのは、いわゆる『歯』の白い形だと思います。

実はその部分はエナメル質という、歯の構成物のうちの一つです。

 

歯は4つの構造から成り立っています


歯は外側から、①エナメル質 その内側に②象牙質、そして ③象牙質の内側に(歯の内部に)神経があります。④はセメント質、といって、歯の根っこの表面を覆っています。通常は歯肉に覆われているので見えません。歯の外側は歯肉の上の部分はエナメル質、歯肉のしたの根っこの部分はセメント質という風になります。

また、歯肉より上の部分(お口を開けると見える部分)は歯冠、歯肉に埋まっている部分を歯根(歯の根っこ)と言います。私の専門である根管治療は歯の根っこの部分なので歯根の治療、歯根の内部の神経の穴(根管)の治療です。

虫歯はまず歯冠から始まりことが多いです。

 

歯の構造


 



 

①エナメル質の役割


歯の外側の部分で、目で見えている白い部分がエナメル質です。エナメル質は硬い結晶構造で外からの刺激を遮断して神経に伝わらないようにしています。

いわば鎧のような役割とでも言えます。虫歯は、このエナメル質が虫歯菌の酸で溶けることから始まります。硬い、歯を守る鎧に目に見えないくらいの小さな穴が開くようなイメージです。その小さな穴から、虫歯菌の通り道になりその下の象牙質に進行します。

象牙質はエナメル質と全く異なる構造をしていて、ミネラル成分もエナメル質より少なく、柔らかく、水分も多くそのためにエナメル質よりも虫歯の進行が早いのです。

エナメル質内の初期の虫歯は唾液の成分や、フッ素の成分で再石灰化することがわかっています。

歯を守りエナメル質の鎧の穴を塞ぎその先の進行を遅らせること、それが虫歯予防の第一歩です。日々のお手入れ、定期的な歯のクリーニングや検診が予防に重要です。

*エナメル質内の初期の虫歯は症状はほとんどありません。

 

②象牙質の構造とその役割


さてエナメル質の下には象牙質があります。

先にご説明したように、エナメル質とは性質が違います。そして、見た目の色も違います。エナメル質は白、象牙質は黄色っぽい色をしています。

 

 

上の写真の黄色い部分が象牙質ですが、通常はエナメル質に覆われているので見えません。

象牙質は細管構造(管状)になっていて、その内部の歯髄(歯の神経)とつながっています。この象牙質の管状の部分を象牙細管と言います。

(上の歯のイラストをもう一度見て見てくださいね。象牙質には細かい筋が描かていますが、これが象牙細管を表しています)

 

象牙細管


象牙質の細管構造は内部の歯髄まで繋がっています。歯髄との間には仕切りがなく、象牙質と歯髄は繋がっているため、象牙質歯髄複合体(Dentin-pulp complex) 、とも言われます。

 

下の図は象牙細管の断面図です。

象牙細管の断面図

 

象牙細管はエナメル質側では径が小さく(0.6~0.8ミクロン)、歯髄側では径が大きい(3ミクロン程度)といわれています。

ちなみに、お口の中の細菌の大きさお口の中のに多く存在する細菌(ストレプトコッカス属)の大きさが0.5ミクロンと言われていますので、象牙細管に侵入することができるのです。この管の径が大きいほど、細菌以外の刺激も神経に伝わりやすくなります。例えば、温度の刺激、機械的な刺激(擦る、削るなど)、化学的な刺激(甘いもの、酸っぱいもの、治療で使用する薬剤、詰め物の成分)等で、そのような刺激も神経に対してダメージになのです。象牙質は象牙細管を通して、こういった外からの刺激を歯の内部の神経に伝えます。そして歯の神経と象牙質は一体となって外からの刺激に対して防御反応を発揮します。エナメル質が鎧だとすると、象牙質は鎧が崩れた後に、敵をいち早く察知して、守りを発動させる伝令のような役割と言えるかもしれません。

 

また、象牙細管の中には液体が含まれています(象牙細管内容液)。この象牙細管内容液の動きが、歯の知覚過敏の症状に大きく関連すると言われています。

知覚過敏のお話はまた別の記事で詳しく解説いたします。

 

③歯髄(歯の神経)とその役割


象牙質の下に(内側に)歯の神経が存在します。歯の神経という風に一般的に言われますが、神経といってもこの部分が全部神経ではなく、体の他の部分の軟組織(お肉の部分)と同じで線維性結合組織の中に、神経や血管が分布しています。それ以外に、免疫の細胞や、未分化間葉細胞といって、再生や修復に関わる細胞が存在しています。

外からの刺激(虫歯菌の侵入)などに反応してこの細胞たちは活発になり、防御反応を発揮します。

虫歯菌を食い止めようとする働きです。虫歯になってもすぐに神経が死なないのは、この神経の防御反応があるからです。

 

歯髄:歯の内部の『歯の神経』と一般的に言われるところ

 

虫歯で歯が痛くなる歯髄炎の仕組み


虫歯のせいで歯が痛くなりますが、それは実はこの防御反応のためなのです。歯髄炎という状態はいわば虫歯菌と歯の神経の中の細胞が戦っている状態です。

この炎症の過程で、様々な炎症性のケミカルメディエーター(サイトカイン等)が放出され、神経の痛みの感受性を高めるのです。そして虫歯からの細菌刺激が途絶えないと、神経は防御しきれなくなり死んでしまいます。

 

虫歯の仕組み


虫歯菌の産生する酸は、歯の外側の硬いエナメル質を溶かします。

溶ければ溶けるほど、細菌は歯の内部に進入します。 いったん象牙質に細菌が進むとエナメル質よりも細菌は歯の内部で広がりやすくなります。象牙質の細管構造と組成はエナメル質のようなバリアにならず、むしろ虫歯菌で溶けやすいのです。

エナメル質がそんなに溶けていなくても、中の象牙質で大きく広がっているのはそのためです。

 

参考文献

1) Pashley, D.H. and Tay, F.R.(2012).  Pulpodentin complex. In Seltzer and Bender’s Dental Pulp: 2nd Ed. Quintessence Publishing Co, Inc.

2)Tjäderhane, L. and Paju, S. (2019) Dentin‐Pulp and Periodontal Anatomy and Physiology. In Essential Endodontology : Prevention and Treatment of Apical Periodontitis:3rd Ed. Wiley-Blackwell.

 

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